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担任なんて,おまけなのさっ

 1989年度 金石中学校 3年3組 卒業文集「Pas a Pas」最後の一文(1990.3.17発行)

 担任なんて,おまけなのさっ

                  3年3組0番  坂根功一

 おもしろかったよ,3の3
 はっきり言って今年のクラスはおもしろかった。1年,2年と君たちのことを全然知らず,突然受け持った3年生であったが,なかなかおもしろかった。
 何が一番おもしろかったかというと,みんなが元気いっぱいだったことだ。
 それは,なによりも20枚近い賞状と,4つのトロフィーが物語っている。
 運動関係で右に出るクラスはなかっただろう。
 昼休みとくれば,真っ先に体育館に飛び出し(チャイムが鳴るまで教室にいるべし,という担任の警告も無視して……),体育の時間とくれば力いっぱいやるし,球技大会ではがんばるし。体を動かすことが好きということは,積極的であるということだろうし,明るいということでもあるのだろう。
 おかげで,ネクラな僕は,みんなの明るさにとっても救われた。
 ただ,お勉強の方はいまいちだったなあ。まあ,いまさら言ってもしかたない。
 しかし,この一年間,僕は結構君たちと一緒にいる時間が長かったと思うよ。
 昼食時間や,掃除の時間はたいてい君たちの近くにいたし,朝学習もほとんど毎日見に行った。
 その結果はともかくとして,これだけは自慢できるぞ。

 「僕は,一番たくさんの時間,自分のクラスの生徒と一緒にいたぞっ!」

 たいしたことじゃないけど,今年一年,これが僕の自慢です。
 思い出すことを書けばきりがないので,いい加減にやめる。
 一人ひとりの心の中にもいっぱいの思い出がつまっていることだろうし,それは文集の中にもたくさん現れている。
 それらは心の中に大切にしまっておいてもらうことにしよう。
 とにかく,君たち一人ひとりがいろんなことを考え,この後大きく成長していってくれればよい。
 担任にしても,親にしても,君たちが一人立ちできるようにするのが仕事なのだ。ましてや担任は,1年間だけのお付き合い。どれだけのことを君たちにできたかわからないし,まあいろいろと不満もあるでしょうが,主役は自分なのだと思いなさい。
 担任なんて,おまけなのさっ。

久しぶりの京都
 そこで突然僕は自分のことを書く。
 久しぶりの京都,と言っても修学旅行のことではない。
 京都のはずれの僕の本籍地のことだ。京都府与謝郡野田川町という。
 坂根家の墓はそこにある。だから僕自身久しぶりに墓参りをしたことになる。
 今年は姉の33回忌にあたるのだ。姉の顔の記憶はない。写真でしかわからない。小さかったので,記憶にないのだ。
 一緒に写っている写真もあるが,ろくに言葉のしゃべれない僕は,会話をした覚えもない。姉は心臓の病気であったが,当時はまだ姉の病気を治せるほど医学は進んでいなかった。手術をしても助かる可能性は半々だと言われたそうだが,当時「半々」などと言うのは,とにかくやってみるが,結局はだめだと言うのと同じであったのだ。
 姉が他界した後,僕は毎日のように聴くお経を覚えたらしい。もちろんいい加減なものだっただろうが,門前の小僧習わぬ経を読むというやつである。仏壇の前にちょこんと座り,木魚をたたいているらしい写真が残っている。おむつをしたおしりの後ろ姿がなんともりりしい僕であった。
 その京都では,僕は初めて大江山に行った。
 あの酒呑童子(しゅてんどうじ)が住んでいたという山だ。
 山頂近くに,鬼嶽稲荷神社という神社があり,そこからがけ沿いに歩いたところに,酒呑童子が住んでいたという洞穴がある。
 行ってみようと思ったが,なにせつっかけばきで行ったので,ずっと先まで行けなかった。
 まあしかし,寂しい神社であった。こんな所からはるばる都まで出て行くなんて,並大抵のことではない。都に行くというのよりは,里に下りてきたんだろうな。
 この地方には「酒呑童子」という酒がある。
 もちろん陶器のとっくり入りで,ついでにさかずきのついているやつを買ってきたがね。

人間なんて,有限なのさっ
 とここまで書いて,どうもねたがつきてきた。
 卒業文集らしくないお話ならば,たくさんあるのだけれども,あんまりごちゃごちゃと自分のことを書いていても仕方ないし……まあなんにしろ,人間の寿命なんて有限で,おまけにこの宇宙の歴史からみれば,ほんの一瞬にすぎない。
 だからつまらんことやったり,言ったりしてる人間をみると,僕なんか,腹が立つのを通り越して,なんだか哀れに感じてしまったりするのだ。
 そんなに悟った人間ではないのだけれども,結局人間の幸せなんて,いかに素敵な人間関係がつくれるか,ではないかと思うのだ。
 この一年間,君たちと,担任との間に素敵な人間関係がつくれたかどうかはわからないが,しかし,君たちの人生の中で,この担任のような人間も一人おったということだな。
 言いたりなかったことはたくさんあったわけなのだが,僕と君たちとのお付き合いも,とりあえずは終わる。
 今度逢えるときに,君たちが一回り大きな人間となっていることを願って,この文集もおしまい。
 どっちが生き生きと生きているか,勝負だね。

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