大乗寺
大乗寺(だいじょうじ)

大乗寺入口の石碑 大乗寺入口の坂  大乗寺は金沢市の南東,大乗寺山(野田山)の中腹に建っています。
 この寺はいまから700年以上も前,1262(弘長2)年,富樫家尚が建て,1340(歴応3)年足利尊氏の祈願所となったという,歴史のある曹洞宗の名刹です。

 その昔,この山の麓に住んでいた私は,春は花見,夏はカブトムシとり,秋はバッタとり,冬はスキーといつも大乗寺山で遊んでいたものです。そして,時々大乗寺にも遊びに来ました。
 4月の下旬頃にお堂の大きな屋根から落ちた雪がまだ残っていたことを覚えていますし,山門の二体の仁王様が,なんだかこわかったなぁということを覚えています。

大乗寺伽藍配置図  大乗寺は最初いまの野々市に創建されました。その後,時代の推移とともに居を変えること四度目にしてこの地にいたっています。
 この地で,元禄年間(1688〜1704)完成までに約十数年を費やしています。
 いまは,仏殿,法堂(はっとう)を前後に配して,それを回廊でつなぎ,向かって右側に方丈,庫裏,鐘楼,左に僧堂,衆寮が配されています。仏殿の前の山門は回廊から独立し,さらにその前方に総門が配されています。
 しかし,これは明治初年(1868)に伽藍の一部を撤廃したあとの姿であり,以前回廊は延びて山門に達し,右側には延寿堂,浴室,経堂が配置され,左側に僧堂,東司があったことが,弘文版の「大乗護国禅寺惣図絵」に見えます。
 しかし,山門,仏殿,法堂などの主要建物が,今なお旧状を保っていることが知られ,禅宗の典型的な伽藍配置を今に伝えています。

大乗寺近辺地図  大乗寺では以下のものが文化財として指定されています。
 大乗寺総門 附棟札一枚(一棟) 附 大乗寺伽藍
    石川県指定有形文化財 1982年1月12日指定
 大乗寺山門 (一棟)
    石川県指定有形文化財 1982年1月12日指定
 大乗寺仏殿 附棟札一枚(一棟)
    重要文化財 1983年6月2日指定
 大乗寺法堂 含祖堂(一棟)
    石川県指定有形文化財 1982年1月12日指定

総門

大乗寺総門  この総門は,棟札によって,山門とともに本多町大乗寺坂下の旧寺地から1699(元禄12)年に移築されたもので,1665(寛文5)年の建立であることが知られます。
 一間薬医門,本瓦葺き,間口三間の風格ある門で,脇塀をつけており,脇塀とともに木部を黒く塗っているため「黒門」と通称されています。

山門

大乗寺山門  この山門は,三間一戸の楼門で,1711(正徳元)年の泰林の「大乗護国禅寺中興碑」によれば,寛永年間(1624〜1644)の建立とされていますが,1699(元禄12)年の移築の際に,多くの手が加えられており,正確な建築年代は確認できません。
 ただし,実肘木(さねひじき),絵様肘木,木鼻(きばな)などの曲線には寛永の様式が認められるようです。
 入り口の左右に仁王像を安置し,楼上には釈迦如来,十六羅漢像を安置し,「東香山」の大額を掲げています。

大乗寺鐘楼  この山門の裏側には,鐘が下がっています。そして,参拝する人は自由にこの鐘をつくことができます。なかなかいい音がしますよ。
(ついていい時間帯 5:30〜19:30)

 山門の柱は禅様式の円柱です。
 下層の組み物は禅宗様出組で一軒(ひとのき)の疎(まばら)たるきを支えており,この絵様肘木と出桁の組合わせが,この山門の特徴となっています。
 山楼を造らず,仁王像の後方から上層にあがるが,上層は逆蓮束(ぎゃくれんつか)の勾欄(こうらん)を巡らし,柱上は出組斗きょう(でぐみときょう)を詰組(つめぐみ)とし,二軒繁だるき(ふたのきしげだるき)を扇だるきに配して,入母屋造り銅板葺の屋根を受けています。
 しかし,資料を写すのも大変です。難しい漢字がいっぱいで,おまけにワープロでは出てきません。あしからず。

仏殿

大乗寺仏殿  仏殿は,山門の奥に建ち,法堂・庫裏・僧堂と回廊でつながっており,棟札によって1702(元禄15)年の上棟であることがわかります。
 方三間の身舎(もや)の四方に裳層(もこし)をつけた方五間仏殿で,外観は重層のように見えます。
 入母屋造り,平入り,本瓦葺きで,1830(天保元)年までは木羽(こば)葺きでした。
 柱は,来迎柱2本だけを円柱とし,他はすべて角柱で,堂内は,背面入側筋に立つ来迎柱に三間の大梁をかけ,束を立てて,和様の格(ごう)天井を受けています。来迎柱の前には,唐様の須弥段(しゅみだん)を設け三尊を安置しています。
 床は漆喰叩きの土間とし,角柱を用いるなどかなり簡略化しているが,禅様式を主とした建物で,古式を偲ばせるのもがあり,禅宗寺院の伽藍の中心的建物としての雰囲気をよく伝えています。(受け売りだけど……)

法堂(はっとう)

 法堂は曹洞宗客殿型で,正面桁行き柱間十間,梁行き柱間七間,単層入母屋造り,平入り,桟瓦葺き(もとは木羽葺き)となっています。
 1697(元禄10)ごろ,本多政長公(藩老5万石)の助力により建てられました。
 正面の観音菩薩は二世太祖,蛍山禅師にゆかりのある尊像といわれています。

 このように,大乗寺はかなり大きなお寺です。
 この近辺は,野田山墓地があり,周りはほとんど畑や草はらです。静かな雰囲気の中で参拝することができます。また,山の上にあがれば,金沢市とその向こうの日本海まで一望することもできます。ぜひ一度来てみまっし。

−−  お地蔵さんの仕切り線です  −−

参考文献
石川県教育委員会 企画・石川史書刊行会 発行『石川県の文化財』(能登出版)1985年

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