金沢弁 「もみじこ」ってなあに? 解答編

もみじこです  正解は「2」番。「たらこ」のことでした。
 やはり,紅葉のように赤いから「もみじこ」というのでしょうね。結構着色料で赤くなっていたりするものもありますが。
 でも,煮て食べるくらいの大きいのはうちでは「たらこ」あるいは「まこ」と言っています。
 「もみじこの煮付け」とは言いません。「たらこの煮付け」「まこの煮付け」ですね。
 つまりは大きさが15センチ以下程度のものを「もみじこ」と言っています。
 たいていは生で食べますが,焼いて食べてもおいしいですね。
 大きい「たらこ」っていうのは要するに鱈の種類が違うってことですかね。まあ子供の頃はそんな種類のことなんて意識もしてなくて,何しろ鱈の子は「もみじこ」って意識でした。
 ちなみに,博多名物「辛子明太子」のように辛く味付けしてあるものはそのまま「辛子明太子」と言ってます。金沢には辛くするというか,調味液につけるという食文化はありませんでしたから。「辛子もみじこ」なんて言いませんね。いや,ありませんね。

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田舎の雰囲気の仕切り線

おまけの話 −すたれる方言− その1

 久しぶりに(2020年11月)「金沢市民の台所」こと「近江町市場」に行ってみました。すると,「もみじこ」という表記が見当たりませんでした。いずれも「たらこ」です。で,あの博多名物でもある辛い調味液に浸けたものは「辛子明太子」となっています。
 この「近江町市場」が観光客で賑わうようになって久しく,特に2015年3月の北陸新幹線金沢延伸以降は観光客で大賑わいなのですが,そのせいもあってか,もやは方言での表記はやめたのでしょうか。
 たまたまこの「もみじこ」の前に立つおにいさんに聞いてみると,すでに10年くらい前から徐々に「たらこ」という共通語表記に変わってきており,最近では「もみじこ」は使っていないとのこと。
(以下の写真は近江町市場にて)
 これは話を聞いた店の写真。右はその拡大。
(これは近江町市場の別に店にて)
 ここでも「たらこ」。
 要するに「もみじこ」は見当たらない。

 それでも出世魚の鰤なんかはまだまだ,「こぞくら」「ふくらぎ」なんて「ぶり」になる前の地方の表現(方言)があるのに,「もみじこ」は使わないのでしょうか。
 どっちにしたって,現物が目の前にあり「もみじこ」と書いてあっても,お客は「たらこ」と判断できるはず。いや,金沢以外のお客は「もみじこ」と「たらこ」とは別物と思ってしまうのか。いやむしろ「この『もみじこ』って『たらこ』ですか?」などと,お客さんとの会話も増えると思うのだが,お客が増えすぎて,そんな受け答えも面倒になってしまったのか。観光客にとってはそんな会話をするのも旅の楽しみの一つだと思うのだが。
 それよりも,そもそもここ「近江町市場」が「金沢市民の台所」ではなくなりつつあり,最近話題になっている「金沢市民の使いづらい台所」となりつつある証拠なのでしょうか。
 どちらにせよ,日本国民の交流が広がれば広がるほど方言はすたれるというのが現実なのかもしれませんね。
 そして現に金沢生まれの若者ですら,すでに方言をほとんどしゃべりません。
 この先「金沢弁」のどれが生き残るのでしょう。

おまけの話 −すたれる方言 その2−

 「近江町市場」で話を聞いたその月(2020年11月),市内のまさしく金沢市民の行く小売店・スーパーマーケットはどう表示されているのか気になって,いくつか回ってみました。
 結論から言うと,その店でパックしたもので,その店でラベルを作るものについては「もみじこ」という表現が残っている店はほとんどありません(というか,今回の調査では8社中1社(12店舗中2店舗)のみ)。
 水産加工会社でパックしているものについては,そもそもきれいなシールが作られており,それらはみな「たらこ」です。特に北信越地方以外で加工されたものは,当たり前ですが残らず「たらこ」ですね。
 それに,店でパックしていても,既製のシールを使うと「たらこ」あるいは「辛子明太子」しかありません。「もみじこ」なんてシールを作っている会社なんてないんですね。
 では,唯一「もみじこ」と表記されていた「ニュー三久 あかつき市場」のラベルを紹介しましょう(許可を得て撮影しています)。

 こんな感じで,居並ぶ「たらこ」には「もみじこ」と表記されています。
 ただし,「もみじこ」という表現を知らない人のために一応「もみじこ(たらこ)」とはなっていますが,それでも方言で表記されていて,嬉しいではありませんか。

 ちなみにこれは同じ「ニュー三久」のものですが,既製のラベル(シール)はどこの店に行ってもこんな感じでみんな「たらこ」です。
 「もみじこ」なんてシールはないんでしょうね。
 この「ニュー三久」は今回調査の店の中では唯一金沢に本社を置く会社。そうでなければもう「もみじこ」は使われないのか!

 各店舗の調査時の状況は以下のようです。【 】内は調査店舗で,すべて金沢市内。
★ニュー三久(本社:金沢市)【あかつき市場】 【伏見台店】
 自家製ラベルには「もみじこ」表記あり。
 既製シールが貼ってあるものは「たらこ」
 つまりは金沢ではこの「ニュー三久」のみが「もみじこ」を使っている会社ってことです。
★マルエー(本社:石川県鶴来町)【間明店】 【小立野店】
 既製シールのみなので「たらこ」と「辛子明太子」となっている。
 【間明店】自家製ラベルはない。【小立野店】自家製ラベルも「たらこ」「辛子明太子」となっている。
★コープいしかわ(石川県)【玉鉾店】
 ほぼ既製シール。
 自家製ラベルも「焼き明太子」「辛子明太子」といった感じである。ここは「たらこ」も使ってなくて,みな「明太子」だった。
★カジマート(本社:石川県津幡町)【桜田店】
 ほぼ既製シールで「たらこ」と「辛子明太子」。
 自家製ラベルも「塩たらこ」「辛子明太子」といった表現。
★Aコープ(JA 金沢市)【笠舞店】
 既製シールがすべてに貼ってあるので「たらこ」と「辛子明太子」のみ。
 その下の自家製ラベルも「焼きたらこ」といった表現。
★アルビス(本社:富山県射水市)【杜の里店】 【田上店】 【笠舞店】
 自家製ラベルはない。
 既製シールのみなので「たらこ」と「辛子明太子」となっている。
★ゲンキー(本社:福井県坂井市)【田上店】
 自家製ラベルはない。
 既製シールのみなので「たらこ」と「辛子明太子」となっている。
★イオン【もりの里店】
 当たり前だけど,全国規模に展開する会社はシールばかりで,それはみな「たらこ」

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