五色生菓子
五色生菓子(ごしきなまがし)

五色生菓子  これは金沢らしい生菓子の一つです。
 金沢には多くのお菓子屋とさまざまな種類の生菓子があり,それだけで一冊の本ができるくらいです。
 この五色生菓子は婚礼のときに使われるお菓子です。
 うちのご近所で,お嫁さんが嫁ぐ家があり,そのときお嫁さんを見に行ったらくれたのがこの五色生菓子です。食べる前に,おお,これは金沢らしいものだといって,撮影してみました。
 この五色生菓子は前田利長の時代,御用菓子所を命ぜられた樫田吉蔵の考案といわれています。
 1600(慶長5)年,利常の夫人,天徳院(=珠姫=徳川2代将軍秀忠の娘)が金沢へお輿入れのとき,吉蔵に作らせたのが始まりということです。これをまねて,庶民の間にも,婚礼のとき(お嫁さんを出すとき)五色生菓子を使うようになったのでしょう。
 (天徳院については金沢桜百景「天徳院」のページへ)

五色生菓子には次の五種類があります。

ささら

ささら  これは丸い餅の半分を赤い粉で染めたもの。日の出を表しています。
 つまり太陽,「日」です。
 もしかしたら,赤い部分は下半分かも知れません。何も考えずに置いて撮影しましたもので……

まんじゅう(饅頭)

まんじゅう  まん丸まんじゅうは月の形。
 いかにも満月って感じですね。
 つまり「月」です。

ようかん(羊羹)

ようかん  蒸し羊羹で,ふつうの羊羹のようにつるつるしていません。山の形です。丸い形が正式らしいです。
 ちなみに,撮影のときお皿に置くのに,何も考えずに置いたら形がゆがみました。まん丸ですよ。撮影をやり直すまでもなく,うちの子どもたちのお腹の中に入りました。私も昔はこれが一番好きでした。そんなに甘くないのです。
 これが象徴するものは「山」「山の幸」を表しています。

うずら(鶉)

うずら  細長い餅で,波の形を表しています。草餅の青でつくるのが正式らしいです。
 つまり,波の形,「海」「海の幸」を表しています。

えがら

えがら  あんこの周りに黄色く染めた餅米がまぶしてあります。この写真ではわかりにくいですね。つぶつぶの餅米がついているのです。
 豊かな実りを象徴しています。
 「里」を表しているのです。

 このように五色生菓子には,「日,月,山,海,里」と五つの意味のある生菓子で,雄大な宇宙までも表しています。きっと,幸あれということでしょう。
 由緒正しき家(?)では親戚から五色生菓子が贈られます。20個ずつお重に入れて,五十をせいろに入れ,二箱を一荷と呼んでいるようです。結婚式が終わったあと,花嫁はお重に入れた五色生菓子を持って近所へ挨拶に回るということです。
 近所のお嫁さんを見に行っても,こういうものがあたるというのが金沢なのでした。

−−  村の水車小屋の仕切り線です  −−

★補足説明

 五色生菓子のそれぞれの意味についてはいろいろな説があるようです。

 このページにおいては
 ささら→日,まんじゅう→月,ようかん→山,うずら→海,えがら→里
 として紹介しています。(下の参考文献「石川県百科大事典」による)
ささら まんじゅう ようかん うずら えがら
 このページでは「ようかん」の黒を山の土,すなわち山,「えがら」の黄色い米粒は田の稲穂,すなわち里の実りと解釈しています。

 また別の説は
 ささら→日,まんじゅう→月,えがら→山,うずら→海,ようかん→里
 です。つまり,ようかんとえがらが逆ですね。
ささら まんじゅう えがら うずら ようかん
 このもう1つの説では,「えがら」の黄色い米粒は栗のイガ,すなわち山の実り,「ようかん」の黒を田の土,すなわち里と解釈しています。

 これは,陰陽五行説(いんようごぎょうせつ)の影響をある程度受けた意味があるともいわれていますが,陰陽五行説では,青→木,赤→火,黄→土,白→金,黒→水ということなので,5つのお菓子がそれぞれに対応はしていないようです。
 黒→水→田んぼの水,黄→土→山という解釈をすれば,後者の意味ですが,黄色い米粒はいかにも実った稲穂にたとえられそうですが……
 おまけにうずらが草餅の青でつくるのが正式とすれば,青→木なので,どうも海には結びつかないようです。いや,青い海かもしれませんが,でも青は木の青なんですね。
 ということで,意味については陰陽五行説の影響というのはあまりなく,それよりも色や形から思いうかべる感覚像の方が優先されているような気がします。
 上の2つの説ともに,ささらは日の出の太陽,まんじゅうはまん丸お月様,うずらは波の形を連想しているようですので,あとの2つの生菓子を何にたとえるかということですね。

 なお,「稿本 金沢市史 風俗編 第二」(大正5年〜昭和11年刊行のものを昭和48年に復刊したもの)の「第10章飲食 第2節食物及飲料」の饅頭の項に以下のような記述があります。

五色生菓子  「生菓子は金澤特有のものにして,餅屋にて製す,何時の頃よりか川南町の道願屋始めてこれを製し,寛政の頃まで営業しゐたりといふ,生菓子は饅頭,さざれ,鶉,羊羹,ゑがら五種の総称にして,これを日月山海里に擬するものあれども,如何にか,この五種を朱塗黒塗の螺鈿を施せる円形の重箱五重に納れ,更にこれを蒸籠に納れたるにて,古来これを嫁娶,開業,温習などの吉事にも,死亡などの凶事にも使用し,その贈遺せられたる蒸籠を屋頭店前に積み,その多きを誇るの風行はるといへども,今漸く衰ふ」

 この記述ではいったいどれが日月山海里なのかはわかりません。
 単純にこの記述の順で対応させると
 ささら(さざれ)→月,まんじゅう→日,うずら→山,ようかん→海,えがら→里
 ということになってしまい,新たな説が生まれてしまいます。
 「日月山海里」の順に入れ替えると,
 まんじゅう→日,ささら(さざれ)→月,うずら→山,ようかん→海,えがら→里です。
まんじゅう ささら うずら ようかん えがら
 ただし,こちらの方がより陰陽五行説にあっています。
 ささら→赤→火→月,まんじゅう→白→金→日,(この2つはちょっと逆?)うずら→青→木→山,ようかん→黒→水→海,えがら→黄→土→田んぼ→里,こんな感じですかね。

 どれが,もともとの意味だったのか,現在調査中です。
 情報をお持ちの方はお待ちしております。
(上の写真提供:金沢市)

−−  村の水車小屋の仕切り線です  −−

★おまけの五色生菓子の解説

 これはいつ手に入れたパンフレットだったか。金沢の電話番号も2桁ですので,かなり昔。先述のお嫁さんのやって来た家から五色生菓子をもらった時のものだったのか?今では不明。
 このパンフレットにある「山本観音堂」もすでに閉店しています。
 だいたいが「ちょうはい帰り」なんて金沢弁,今では使いません。「ちょうはい」とは「嫁の里帰り」のことです。つまりはそれはおめでたいこと,嫁ぎ先から五色生菓子を持たせたってことですかね。いや逆?「ちょうはい」の帰りだから,また嫁ぎ先に戻る時に持たせたってこと?
 (金沢弁については「読んでみまっし金沢弁」のページへ)
五色生菓子
五色生菓子

−−  村の水車小屋の仕切り線です  −−

 参考図書
 北國新聞社出版局「石川県百科大事典」北國新聞社,1993
 名著出版「稿本 金沢市史 風俗編 第二」金沢市役所,1973

−−  村の水車小屋の仕切り線です  −−