
		 旗源平は金沢に古くから伝わる遊びです。
		 源氏と平家の二手に分かれて,2つのさいころを振り,出た目によって相手の旗をとるというものです。
		 そして最後に相手の最高位のまといをとった方が勝ちという遊びです。
		 さいころを振って出た目によって相手の旗をとるという,単純な遊びなのですが,この遊びの特徴は出た目の呼び方にあります。
		 たとえば,「1と1」なら「ちんちんかもかも」ってなぐあい。
		
		 一番いいのは「1と5」で,これなら「うめがいち」といったぐあい。
		 ちなみに,加賀藩の紋所は「梅鉢」(右の図)。
		 そこでさいころの「5」の目を梅と見立てて「うめがいち」ということですね。
	
		 それではこの遊びのルールを少し詳しく説明してみましょう。
		 ちなみに,私が小さい頃からやっているルールですから,場所によってはちょっと違っているかも知れません。
	
		1.人数は何人でもかまいません。
		 これがまずこの旗源平のうれしいところですね。
		 とにかく二手に分かれられたらよいので,偶数人と奇数人となってもかまいません。
		
		(旗源平をして遊ぶ材木町小学校の子どもたち。ちなみにこの旗源平は特製の大きいもの。普通使うのはまといの高さも40cm程度です。)
	
		2.一方が「源氏」他方が「平家」となります。
		 源氏と平家に分かれるなんて,どこの地域にもそんな伝説みたいなものありませんか。
		 源氏なら白地に青の笹りんどうの旗,平家なら赤地に白のあげはちょうの旗です。
		 紅白に分かれるということですね。
		 そういえば昔見た映画にこんなのありました。
		 ある島の隣同士の村が,それぞれ源氏の末裔,平家の末裔ということでことごとく仲が悪い。
		 子どもたちも島の同じ小学校に通うけど,村が違う子どもどうし仲が悪い。
		 平家の末裔という村の子は相手の源氏の末裔という村の子をはやしてこう歌う……
		 「源氏白旗いい旗だ,よい,よい!よく見りゃ父ちゃんのふんどしだ!」
		 対して,源氏の末裔の子はというと,やはり対抗してこう歌う……
		 「平家赤旗いい旗だ,よい,よい!よく見りゃ母ちゃんの腰巻きだ!」
		 なぜかこの映画,この歌のところだけよく覚えてる……閑話休題
	
		
		3.お互いに自分の旗を規定の数だけ持ちます。
		 小旗10本,中旗5本,大旗1本,そしてまとい1本です。
		 この後の旗の取り合いのルールのために簡単に点数に換算すると,小旗1点,中旗10点,大旗50点,そしてまといが100点です。
		 つまり合計210点持ってるみたいなものです。
		 そしてまといが取られたら負け。つまり,最低でも100点残ってないと負けということです。
	
		4.先攻後攻を決めます。
		 お互いに1つずつさいころを振り,大きな目の出た方が先攻となります。
		 この遊びは外様大名であった加賀前田藩が幕府の目をはばかりながら,武芸をたっとぶ心を遊びで示したものだといわれています。
	
		5.交互に一人ずつ2つのさいころを振り,出た目によって,相手方の旗を取ります。
		 という風に私は小さい頃やっていたのですが,金沢の遊びの本を読むと,一方の組が全員ふったら,次の組がまた全員ふるとなるようです。
		 この方が,一気にたくさんとってとられて,面白味があるのかもしれませんね。
		 さて,そのときのさいころの目による相手の旗の取り方は以下の表のようになります。
		 
		
			さいころの目による旗のやりとりの表1(一覧表型)(このページの下の表)をご覧ください。
		 独立ページでは
		サイコロの目による旗のやりとりの表1(一覧表型)(内容は下の表と同じ)です。
		 
		さいころの目による旗のやりとりの表2(行列型)は独立ページになっています。
		 出た目によって,取る旗の数や,続けて振る権利があるかどうかが決まっています。
		 また,その目の唱え方もあります。
		 一番いいのは「1と5」(「うめがいち」)「1と6」(「ちんろく」)で,中旗1本もらって,さらにもう一度さいころを振ることができます。
		 最悪なのは「2と4」(「しのに」)で,相手に中旗を1本返します。
		 旗は両替(?)をすることができますから,小旗10本取られたら,それをもらって中旗を1本あげることもできます。
		 ただし,白旗と赤旗の交換はできません。たとえば源氏なら,自陣の白旗と,敵陣に取られた白旗との両替ができるということです。
	
		6.こうやって源氏方と平家方が交互に一人ずつさいころを振り,相手の旗を取っていき,相手のまといを先に取った方が勝ちです。
		 そのほかのルールとして以下のようなものも金沢の本には載っていました。
		 ・敵の旗を全部とった組が勝ち。
		 ・「ちんろくあがり」「うめがいちあがり」といって敵の旗を全部取ってから,1と6,1と5の目が出ないうちは勝ちとしないルール。
		 さいころを振って旗を取り合うという単純な遊びですが,昔の子どもたちにとってはこれでなかなか興奮する遊びだったのですね。(昔の子ども談)
	
| さいころの目 | 唱え方 | もらえる旗と数 | 点数に換算 | 
					続けてさいころを 振れるか  | 
			
|---|---|---|---|---|
| 
					 | 
				ちんちんかもかも | 小旗2本 | 2点 | 続けて振れる | 
| 
					 | 
				にゃあにゃあ | 小旗2本 | 2点 | 続けて振れる | 
| 
					 | 
				さざなみ | 小旗2本 | 2点 | 続けて振れる | 
| 
					 | 
				しゅうじゅう | 小旗2本 | 2点 | 続けて振れる | 
| 
					 | 
				ごんご | 小旗2本 | 2点 | 続けて振れる | 
| 
					 | 
				じょうろく | 小旗2本 | 2点 | 続けて振れる | 
| 
					 | 
				ちんに | 小旗1本 | 1点 | 振れない | 
| 
					 | 
				ちんさん | 小旗1本 | 1点 | 振れない | 
| 
					 | 
				ちんし | 小旗1本 | 1点 | 振れない | 
| 
					 | 
				うめがいち | 中旗1本 | 10点 | 続けて振れる | 
| 
					 | 
				ちんろく | 中旗1本 | 10点 | 続けて振れる | 
| 
					 | 
				にさまのかんかんど | なし | 0点 | 振れない | 
| 
					 | 
				しのに | 中旗1本返す | −10点 | 振れない | 
| 
					 | 
				ごにごに | なし | 0点 | 振れない | 
| 
					 | 
				ろくに | 小旗1本 | 1点 | 振れない | 
| 
					 | 
				しさまのかんかんど | なし | 0点 | 振れない | 
| 
					 | 
				ごさまのかんかんど | なし | 0点 | 振れない | 
| 
					 | 
				ろくさん | 小旗1本 | 1点 | 振れない | 
| 
					 | 
				ごっしりはなかみ | なし | 0点 | 振れない | 
| 
					 | 
				しろく | 小旗1本 | 1点 | 振れない | 
| 
					 | 
				ごろく | 小旗1本 | 1点 | 振れない | 
		
	
		
		 小さなペーパークラフトの旗源平を作ってみました。組み立てて遊んでみてください。高さは約18センチです。
		 型紙や作り方は「旗源平のペーパークラフト」のページへどうぞ。
	
		
	
		 1916(大正5)年から1936(昭和11)年にかけて,金沢市役所が編纂した「稿本 金沢市史」(1972(昭和47)年復刻)の中に,旗源平についての記述があります。
		 風俗編第二の第1章遊戯,第2節児童の遊戯(573ページ)に「旗遊」として,以下のように書かれています。
	
男女老幼入り交りて,源氏,平氏の二組に分れ,相対して座し,源氏側は白旗に笹竜胆の紋をつけ,平氏側は赤旗に揚羽蝶の紋をつけ,一方の旗数は,小旗十本,中旗五本,大旗一本,纏一本にして,小旗十本は中旗一本に,中旗五本は大旗一本に値し,大旗を立て了りて,始めて纏を立つるを例とし,二個の賽子は双方一人ずつ交る交るその二個を同時に振ひ,その出目相同じくして,一一,六六,二二,三三,四四,五五なれば小旗一本を,一六,一五の出目なれば小旗二本を立て,もし四二の出目なれば,すでに立てたる小旗一本を取り除き,全部の旗および纏が一方より前きに立ち了る方を勝利とす,旗および纏は,みな紙製なり,この旗遊びは金沢にあれど,他国になしといえど,如何にか,現今にても尚ほこの遊をなすこと行はる
		 これによれば,上記のルールとちがうところは
		1.サイコロの目に対する旗の数がちがう。
		 「ぞろ目」で「小旗1本」,「うめがいち」と「ちんろく」で「小旗2本」というだけのものになっている。
		 「しのに」も「小旗1本もどす」である。
		2.金沢の遊びの本に書いてあるように,源氏方,平家方が続けて振るということはなく,自分がやっていたように源氏と平氏側が交互にサイコロを振る。
		3.旗のやりとりをするのではなく,サイコロの目によって,自分の側の旗をどんどん立てていき,すべて立った方が勝ちということになる。
		 といったことですね。いずれにせよ,ちゃんとルールを決めて,それにそって楽しく遊べばいいってことですね。
	
		
	
		
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