ハンカチ事件

 それは数学のテスト返しのことだった。前日,係が予定を聞きにやって来る。
「先生,明日の予定は何ですか?」
「恐怖のテスト返し!」
「持ち物は何ですか?」
「各自,ハンカチ二枚。」
校舎 「はーい。」と,いぶかる様子もなく,軽やかに去っていく。こちらもその何も疑わない後ろ姿を気にもとめなかったのだが,さて,翌日のテスト返しである。
「では,恐怖のテスト返しです。各自ハンカチ二枚はあるかな?」
「はい。」(と机にハンカチを出す者がいる。えっ,あれれ,本当に持ってきている?そういえば伝達黒板にもはっきりと「ハンカチ二枚」の文字があるぞ。)
「では,テストのできが悪かった場合,女子はそのハンカチで涙をふくこと。」
「えっ,数学の授業に使うんじゃなかったの。」(一部教室がざわつく。)
「先生,できが悪かった男子は?」
「男子は鼻血をふくこと。」
「えーっ?!」「授業に関係ないの?」「せっかく持ってきたのに!」「なんなのこれ!」(一段と教室がざわつく。)
 はい,すみません。よもやこんなにみんながハンカチ二枚を持ってくるとは。でも,素直で真面目,それはとても大切なことです。そんな素直で真面目な泉中学校の生徒たちが大好きです。

(泉中学校 学校文集「いずみ」職員随想 2010年3月)

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